こんにちは!ゆめゆめの佐藤です。
さて前回「利用者と社会との信頼関係の構築」についてお伝えしましたね。
今日はその続き、障がい者も「好きなことでイキイキと」生きられるをお伝えします。
障がい者も「好きなことでイキイキと」生きられる
障がいのあるなしにかかわらず、その人を取り巻く環境が与える影響は計り知れません。特に障がいのある方にとって、環境は生きやすさに直結するといっても過言ではありません。
その考えをもとに私たちは、集中できる環境をつくり、「楽しい」「もっとやりたい」という気持ちを大切にしたいという思いから、就労継続支援B型事業所 福祉工房ゆめゆめを始めました。ここでは、利用者さんの好きなこと、得意なことを仕事にしています。
ある利用者さんであるIさんの例をお話ししましょう。
Iさんは前事業所からのお付き合いで、絵やイラストを描くことを仕事にしています。「絵を描くことが好き」「手先が器用」「感情を絵で表現できる」「独語がある」という特徴をお持ちで、「自閉症スペクトラム」との判定を受けています。ご家族からは「言葉よりも絵が先だった」と教えていただきました。
特徴的なのは、独語があることです。利用者さん本人は、それについてこう説明してくれます。「頭の中におそ松くんやニャロメが出てきて遊ぼうと誘うので『あっちに行って』と言っている」「頭の中に突然物語が浮かんできて、そのセリフを言っている」のだそうです。
さらに興味深いことに、そのことばは考えて出てくるのではなく、自然に頭にわき出てくるのだと表現します。自然にわき出てくることなので、セリフを言っているという意識はもちろんありません。ただ、そのセリフには時として「死ね!」「このやろー!」などの過激なことばも含まれることがあり、周囲に誤解されることもありました。
ところで、福祉工房ゆめゆめでは、利用者さん全員のために特別な環境を用意しています。自分だけの机があり、パーテーションで仕切ることで、自分専用の空間が生まれるような設計をしているのです。それは、まるでアーティストのアトリエのよう。
この環境は、彼に好ましい影響を与えました。専用の空間のため、彼の独語を気にする人はいません。だから、好きな絵を描く、好きな技法を試す、好きな画材を用いることが、より一層自由になったのです。
さらに、イヤホンで好きな音楽を聴きながら制作できるようにしました。周囲の音が気にならず集中できるためです。また、支援員全員が独語に対する正しい知識を持ち、必要以上に注意することはしません。
この環境の変化は、驚くほどの効果をもたらしました。利用者さんの心が穏やかになり、それが作品づくりにも表れ、より丁寧な制作が可能になったのです。その変化をさらに育てるため、私たちは様々な展示会やコンテストへの応募も始めました。また、関わってくださった方々へのお礼状を欠かさず出し、丁寧な関係づくりを心がけています。
お客様には手書きのイベント案内を送り、ご購入や来所の有無にかかわらず、すべての方にお礼状をお送りして関係を深めています。そのために利用者さんは、事前にことばを紙に書いて練習したり、支援者が書いた手本を見ながらお便りを書いたりします。この過程で、その場に適したことばづかいも自然と学んでいくのです。
こうしたことが続いていくうちに、利用者さんが自分のことばに自信を持ち始めました。最近では、支援者が手本を示す前に、自分のことばで表現しようと努力する姿も見られるようになりました。来所されたお客様や対面販売の際のお客様との会話も、自然な形でできるようになってきていす。このように、作品づくりの技術だけでなく、ことばの面でも大きな成長を遂げているのです。
環境を整え、好きなこと・得意なことを仕事にすることで、障がいのある人もイキイキと毎日を送ることができる。私たちはその確かな手応えを感じています。
あっ!少し長くなりましたね。
では続きは次回ということで・・・
またお会いしましょう。
佐藤寿恵
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